熱処理 用語の解説

熱処理一般

塩浴熱処理

塩浴中で行なう熱処理。

オーステナイト

1種以上の元素を含む鉄固溶体。

共晶

冷却の過程で、一つの融液から二つ以上の固相が密に混合した組織への変化。またはその反応で生じた組織。

共析

冷却の過程で、一つの固溶体から二つの固相が密に混合した組織への変態またはその変態で生じた組織。平衡状態図で、共析成分より合金元素濃度が少ないときには亜共析、多いときには過共析という。

経年変形

室温で長年月の間に材料の寸法・形状が変化すること。

固溶体

2種以上の元素によって形成される均一な固体の結晶質の相。

真空熱処理

真空中で加熱して行なう熱処理の総称。真空焼きなまし、真空焼入れ、真空焼戻しなどがある。

水素ぜい(脆)化

鋼中に吸収された水素によって、鋼材の延性または靱性が低下する現象。

ぜい性

鋼がもろくなる性質。温度の範囲による分類として、赤熱ぜい性(熱間加工の温度範囲)、青熱ぜい性(200~300℃)、低温ぜい性(室温付近またはそれ以下の低温)がある。

析出

固溶体から異相の結晶が分離成長する現象。

セメンタイト

Fe3Cの化学式で示される鉄炭化物。

熱処理

固体の鉄鋼製品が全体として又は部分的に熱サイクルにさらされ、その性質・組織に変化をきたすような一連の操作。

パーライト

オーステナイトの共析分解によって形成されるフェライトとセメンタイトの層状集合体。

フェライト

1種以上の元素を含むα鉄またはδ鉄固溶体。

雰囲気熱処理

炉内の雰囲気ガスを目的によってそれぞれ調節して行なう熱処理。雰囲気ガスには酸化性、還元性、不活性、浸炭性、窒化性などの種類がある。

偏析

合金元素や不純物が不均一に偏在している現象またはその状態。

表面硬化

高周波焼入れ

加熱が誘導によって行なわれる表面硬化処理。

浸炭

オーステナイト中に固溶している状態の炭素を、表面に富化(ふか)させるために鉄鋼製品にオーステナイト状態で適用される熱化学処理。浸炭した鋼は、焼入焼戻しを行って使用することがふつうである。この処理を肌焼きということもある。浸炭剤には固体、液体およびガスがある。

窒化

窒素の表面富化(ふか)を生じるように鉄鋼製品に適用される熱化学処理。アンモニア分解ガスによるガス窒化と、青酸塩による液体窒化がある。

表面硬化処理

表面加熱後の焼入硬化処理。浸炭焼入れ、窒化、高周波焼入れ、炎焼入れなどがある。

炎焼入れ

熱源が炎である表面硬化処理。

焼入れ・焼戻し

油焼入れ

冷却に油を用いて行なう焼入れ。

塩浴焼入れ

溶融塩を用いる熱浴焼入れ。

空気焼入れ

空気中または適切なガス雰囲気中で冷却する焼入れ。自硬性をもつ鋼を焼入れする場合に行なわれる。

サブゼロ処理

焼入れ後、残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させるために行なう処理で、常温よりも低い温度へ冷却し、その温度で均熱する熱処理。

残留応力

外力または熱勾配がない状態で、金属内部に残っている応力。

残留オーステナイト

焼入硬化後、常温において残留する未変態オーステナイト。

質量効果

質量および断面寸法の大小で、焼入硬化層深さの異なる度合。質量および断面寸法のわずかな変化で、焼入硬化層深さが大きく変化することを、質量効果が大きいという。

真空焼入れ

真空中で加熱し、ガス、油または水などによって急冷する焼入れ。

調質

焼入れ後、比較的高い温度(約400℃以上)に焼き戻して、トルースタイトまたはソルバイト組織にする操作。

熱浴焼入れ

冷却に適切な温度に保った熱浴(溶融金属、溶融塩、油など)を用い、この熱浴で急冷し適切な時間保持した後、引き上げて空冷する焼入れ。

部分焼入れ

部品の各部に所要の性質を与えるために、局部的に行う焼入れ。

ベイナイト

パーライトが形成される温度と、マルテンサイトが形成され始める温度との間の温度間隔で起こるオーステナイトの分解によって形成される準安定構成物で、炭素がセメンタイトの形を取って微細に析出しているフェライトから構成される。

マルテンサイト

元のオーステナイトと同じ化学組成をもつ体心正方晶または体心立方晶の準安定固溶体。

水焼入れ

冷却に水を用いて行う焼入れ。

焼入れ

鉄鋼製品を静止空気中よりもより迅速に冷却することからなる操作。

焼入硬化

オーステナイト化後、マルテンサイト又はベイナイトに変態するような条件下での冷却によって得られる鉄鋼製品の硬化。

焼戻し

一般に焼入硬化後、または所要の性質を得るための熱処理後に、特定の温度(Ac1未満)で、1回以上の回数均熱した後、適切な速度で冷却することからなる熱処理。

焼戻しぜい性

特定の温度で均熱、またはこれらの温度を徐冷するとき、特定の焼入焼戻鋼に影響を及ぼすぜい性。

焼ならし・焼なまし

応力除去焼なまし

本質的に組織を変えることなく、内部応力を除去するために、適切な温度へ加熱または均熱した後、適切な温度で冷却する熱処理。

球状化処理

セメンタイト板のような炭化物粒子を、安定な球状の形態へ発達させること。析出した炭化物の球状化をもたらすために、一般にAc1温度の近辺で長く均熱する。またはこの温度周辺を振らすことにかかわる焼なまし。

低温焼なまし

残留応力の低減または軟化を目的として、変態点以下で行う焼なまし。

ひずみ取り焼なまし

鋼材または鋳物に生じたひずみを除去するために、荷重をかけながら変態点以下の温度に加熱保持して行なう焼なまし。

焼なまし

適切な温度に加熱および均熱した後、室温に戻ったときに、平衡に近い組織状態になるような条件で冷却することからなる熱処理。

焼ならし

オーステナイト化後空冷する熱処理。前加工の影響を除去し、結晶核を微細化して、機械的性質を改善する。

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