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B-1 射出成形機「EC-SX」シリーズの新しい5つの技術

近年のプラスチック成形加工分野におけるユーザニーズに的確に応えるため、新技術として、新型締装置「Solid Clamp」、新射出装置「S-Cube」、新コントローラ「INJECTVISOR-V50」、「成形条件の自動補正機能」、「スクリュラインナップの拡充」の5項目を提案し、これらの新しい射出成形の技術を盛り込んだ「EC-SX」シリーズを開発した。本稿では、これらの射出成形機技術について紹介する。

【プラットフォーム】B.加工機・成形機の設計能力
【適用マシン】射出成形機

<技術ポイント>

  • 高剛性型締:ダイプレート剛性を当社比で30%アップ
  • リニアガイド方式:クリーンな成形作業環境と超精密安定成形
  • ダイナミック加減速制御:当社比で最大20%のサイクル短縮
  • 「DST-Press」:型締力を自動補正
  • 「DST-Fill」:モニタ値変化を検出し成形条件を自動補正
  • BFスクリュ:エンプラの成形における「黒点」の発生を防止

1 . はじめに

近年、プラスチック成形加工分野では環境負荷低減や生産コスト削減のため、成形品の薄肉・軽量化要求が高まるとともに、より一層の生産性向上や、不良率を最小限に抑える安定性を確保する技術が求められている。これらのユーザニーズに射出成形機メーカとして的確に応えるため、当社は5つの新しい射出成形に関する技術を開発し、これらを最新鋭電動式射出成形機「EC-SX」シリーズに搭載した。本稿では、「EC-SX」が持つ5つの新しい射出成形機技術について紹介する。

2 . 5つの射出成形機技術

2.1 新型締装置「Solid Clamp」

図1 リンクライントグルとダブル剛体プレート

図1 リンクライントグルとダブル剛体プレート

薄肉・軽量化する製品を高品質に成形するためには、成形時の金型のたわみを最小限に抑える高い剛性を持った型締装置が必要不可欠である。そのため、当社は新型締装置「Solid Clamp」を開発し、ダイプレートの剛性を当社比で30%と大幅に向上させた。また、トグル式型締機構の型締力を発生させるリンクの力を、移動ダイプレートセンターに寄り付かせるリンクライントグル(傾斜トグル)、および移動ダイプレートのみならず固定ダイプレートも2枚構造注1)とした「ダブル剛体プレート」により、均一な型締力分布を実現し、低い型締力での成形も可能となった。(図1、図2)

図2 移動ダイプレートのたわみ分布

図2 移動ダイプレートのたわみ分布

また、移動ダイプレートの支持を従来のタイバーガイド方式からリニアガイド方式(タイバーブッシュレス)に変更したことによって、型開閉時の摺動抵抗を減らすと同時に、直進性を向上させた。本構造は、当社ではレンズ成形などのダイプレートの平行度や直進性に対する要求精度の非常に高い分野で採用してきた構造である。この構造を標準として採用することにより、低摺動抵抗構造による金型保護検知機能が向上し、金型開閉時の直進性が良くなり、金型の長寿命化につながった。一方タイバーブッシュがない構造はタイバーへのグリース給油が不要となり、移動ダイプレート金型取付面へのグリース付着や、シュート口へのグリース落下がなくなり、金型交換時にタイバーに付着したグリースによって金型や作業着を汚すこともない等、クリーンな成形作業環境を実現し、好評を得ている。
「Solid Clamp」はトグル特性の見直しと、後述する新コントローラ「INJECTVISOR-V50」による新制御方式により、ドライサイクル時間が短縮され、ハイサイクル成形も可能になった。

注1)固定ダイプレートの2枚構造はEC350SX以下の機種で対応

2.2 新射出装置「S-Cube」

「S-Cube」とは、「Simple、Steady、Smooth」の意味で、具体的には「シンプルな構造・構成とスムーズな動きによる安定成形」を実現する射出装置である。スムーズな動きを実現するため、スクリュを駆動させる射出ラムの摺動部にリニアガイドを採用したフリクションフリードライブ方式(図3)を搭載している。これは射出時の摺動抵抗を極限まで低減させることによるスムーズな射出の立ち上がりと、計量時のスクリュ背圧制御の精度向上により、精密安定成形に大きく貢献している。特に、高速・高圧成形におけるスムーズな動きは薄肉微細転写成形などの超精密成形分野での安定成形に効果を発揮している。

図3 フリクションフリードライブ方式

図3 フリクションフリードライブ方式

また、精密成形において「安定成形」とともに重要となる要素として、複数台で同一品の成形を行った場合の成形機の機差間での成形品精度の寸法差があげられる。これらに対応して「S-Cube」では、圧力検出器にデジタルロードセルを採用し、さらにロードセルの固有特性をリニアライズ補正することによって、ロードセルの固体差を吸収し、機差間での寸法差を極限まで抑えている(図4)。

図4 リニアライズ補正の模式図

図4 リニアライズ補正の模式図

2.3 新コントローラ「INJECTVISOR-V50」

図5 INJECTVISOR-50

図5 INJECTVISOR-V50

充填性能で成形品質が左右される高速射出成形や微細成形での安定成形を実現するためには、成形工程の重要ポイントである保圧切換精度の向上が必要である。そのため、当社は新コントローラ「INJECTVISOR-V50」(図5)を開発し、射出成形機の動作をつかさどるサーボモータの制御周期を全軸において、高速化(62.5μs)することで保圧切換精度の向上を図った。これによりハイサイクル成形と精密・安定成形の両立が可能となり、前述の「S-Cube」との組み合わせにより、保圧精度を必要とする厚肉成形品、射出速度・圧力の多段制御を要する外観部品の安定成形、薄肉成形品などの高速成形、ショットボリュームの小さな微細成形品の精度向上など、あらゆる成形品に対して品質向上が図られた。

図6 型開閉ドライサイクルの比較

図6 型開閉ドライサイクルの比較

また、トグル式型締装置では、クロスヘッド(型開閉用ボールネジのナット部)と移動ダイプレートとの速度比が位置により変化するため、移動ダイプレートの加減速特性(加速度)が位置により異なる。そこで、移動ダイプレートの位置にかかわらず移動ダイプレートの加減速特性を最大加速度に制御する「ダイナミック加減速制御」を開発した。その結果、どの位置でも高応答でショックレスな型開閉動作を実現し、当社比で最大20%のドライサイクルの短縮を図ることができた(図6)。

図7 RA押出制御の効果

図7 RA押出制御の効果

その他、製品の押出動作を高応答化する「RA押出制御」(RA:Rapid Action)も標準採用とし、特に多数回押出動作をさせる反復押出のサイクル短縮に貢献している。図7には反復押出動作を5回させた場合のサイクル短縮例を示す。
また、周辺機器への出力信号を任意に選択でき、出力条件や出力形式も簡単に設定することができる「信号カスタマイズ機能」を追加した。これにより、周辺装置の構成が変わった場合の、改造時の手間を削減できるほか、ユーザ自身で周辺機器との連携強化が可能となった。

2.4 成形条件の自動補正機能

図8 DST-Fill( 成形条件補正)の品質補正例

図8 DST-Fill( 成形条件補正)の品質補正例

金型の温度変化や成形材料のロット変化などの「外乱」に対して、安定成形を維持するために、当社は2つの成形条件の自動補正機能を実用化した。
1つは、型締力を補正する「DST-Press」(DST:Dynamic Self Tuning)である。これは連続成形中の型締力の変化を補正することで、成形中の型締力を常に一定に保つことができ、安定成形を実現する。この型締力の補正は、型締力を検出したサイクル内(製品取出中)に処理するため、補正動作による成形サイクルへの影響がないのが特長である。
もう1つは、成形中の保圧切換圧力や最小クッション位置(射出工程でのスクリュ最前進位置)などのモニタ値変化を検出し、成形条件を補正する「DST-Fill」である。図8は、成形材料(液晶樹脂LCP)のロットがAからBに変化したことにより、成形品に発生したショートショット(未充填部が現れる成形不良)を「DST-Fill」で補正し、良品となった事例である。ここでは、材料ロットが変わったことによる材料の流動特性の微妙な低下がモニタ値(保圧切換圧力)の上昇としてみられた。「DST-Fill」によるバレル温度補正(設定温度を上げた)により、材料の流動特性が前のロットA相当となることで、モニタ値(保圧切換圧力)も元に戻り、ショートショットは解消している。このほかに、成形材料の粉砕材の混合比率が変わった場合の変化に対しても「DST-Fill」は効果を発揮している。

2.5 スクリュラインナップの拡充

PAやPBTなどのエンジニアリングプラスチックの成形における「黒点」の発生を防ぐ目的として、新たにBFスクリュ(BF:Burn Free Full Flight)を開発し、当社の保有するスクリュバリエーション(表1)に追加した。BFスクリュはスクリュ表面に成形材料の剥離性改善を目的に特殊コーティングを施したことにより、スクリュ表面への成形材料の付着滞留を抑え、熱劣化による樹脂の焼けである「黒点」の発生を防いでいる。また、スクリュデザインの工夫により、成形材料の搬送能力の向上を図り、粉砕材入りの成形材料においても、安定可塑化を実現し、スクリュフライト部での樹脂の滞留を防止している。

図9 BFスクリュ(粉砕材に対する効果)

図9 BFスクリュ(粉砕材に対する効果)

表1 スクリュバリエーション
DBGスクリュ(標準)汎用
SRBスクリュエンプラ
DBCスクリュ硬質塩化ビニール
GN4スクリュPMMA、透明樹脂
BFスクリュエンプラ(黒点防止)
図10 POM樹脂成形3ヶ月後のスクリュ

図10 POM樹脂成形3ヶ月後のスクリュ

また、PA66粉砕材入りの成形材料を使った場合でも、計量時間および(射出)クッション量が安定している。その様子を図9に示した。そして図10は、3ヶ月連続成形(成形材料POM)した後でスクリュを引き抜き、スクリュ表面を観察したものであるが、スクリュ表面への成形材料の付着は極めて少ないことがわかる。

3 . おわりに

各射出成形機メーカは、成形機の機能向上に向けてさまざまな提案により「差別化」にしのぎを削っている。当社は先頭を走るべく5つの新しい射出成形機の革新的な技術を「EC-SX」シリーズに搭載した。今後もお客様にとって、付加価値の高い技術を提供し、市場の要求に応えていく所存である。