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B-3 超深溝スクリュによる大容量化技術

B-3 超深溝スクリュによる大容量化技術

同方向回転二軸押出機は、優れた分離、混合機能と適用性により広範な分野で採用されている。当社では、長年の経験と実績で培った設計・製造・成形技術を駆使し、従来の常識を覆す高速回転やスクリュの深溝化により成形能力の増大と品質向上を図ってきた。特に、成形品質低下をもたらす熱履歴や局部発熱の低減、均質化により品質改善を実現し、近年増加しているコンパウンディングレスの省エネ・省工程のシ-ト・フィルム直接成形分野に大きく貢献している。

【プラットフォーム】B.加工機・成形機の設計能力
【適用マシン】二軸押出機

<技術ポイント>

  • スクリュ深溝比(かみ合い深さ):従来の1.5~1.6に対して1.8
  • スクリュ山幅40%減少、搬送容積40%増大
  • 消費動力の削減(30%以上の省エネ)と樹脂温度低下 (従来機よりも5℃低下)による高品質化
  • 従来機と超深溝機の利点を生かした複合型(CS型)の開発

1 . はじめに

各企業は国際化の中で熾烈な過当競争下にあり、地球環境対策を柱とする社会貢献と市場競争力強化に取り組んでいる。プラスチック産業界においても、高効率生産による省エネルギ化、揮発性有機化合物の低減対策など環境負荷の低減や、新規ポリマー開発、複合化による樹脂の高機能化による差別化、低コスト化に取り組んでいる。一方、プラスチック製品に対するユーザニーズは多様化が進み、前述の高効率生産と相反する状況が生じている。押出機メーカは、これらのニーズを両立させるため各種省プロセス、複合化技術をユーザと共に開発しながら提供してきた。
特に、同方向回転二軸混練押出機(以下、二軸押出機)はその優れた分離、混合機能と適用性により省工程、省エネルギのキーコンポーネントとして広範な分野で採用されており、現在も適用分野の拡大が進んでいる。本稿では、数年前より開発を進め拡販を進めている、最新型の超深溝型プロファイルをもつ二軸押出機の運転特性とその応用展開について述べる。

2 . 超深溝機“ TEM-DS” シリーズ

2.1 機械的特長

二軸押出機の基本性能は、「スクリュ許容伝達トルク」、「許容スクリュ回転速度」、「スクリュ深溝比=スクリュ外径谷径比、かみ合い深さの指標」の基本仕様数値で評価することができる。本機の最大の特長は、スクリュ深溝比が1.8になっていることである。この数値は有効なせん断作用を付与できる必要最小限のスクリュ山幅を確保し、かつ搬送容積が最大となるよう配慮し、決定されており、従来型機“TEM-SSシリ-ズ”(深溝比1.5 ~ 1.6)に対して、スクリュ山幅が40%減少し、搬送容積は40%増大している。搬送容積の増大は、低嵩密度原料の処理能力を飛躍的に増大させることが期待できると同時に、同一押出量における運転では、滞留時間の増加も可能である。
また、スクリュ山幅の減少は、せん断作用の低下をもたらし、過剰な発熱を抑制することで、焼けや炭化物の発生の低減、および長時間運転時の品質安定性に寄与する。

2.2 各種運転特性とマイルド混練性

図1 従来型機と超深溝機の断面温度分布

図1 従来型機と超深溝機の断面温度分布

超深溝機の最大の特長である、大きなフリーボリュームにより搬送性能に優れ、嵩密度の小さな微粉原料やリサイクル用途などで用いられる粉砕品などの大粒で低嵩密度原料において、処理量の増大が可能となる(スクリュ構成の適正化など、プロセス的な考慮が必要)。一方、スクリュの山幅の減少は、過剰な局部せん断作用の低減による消費動力の削減を実現し、省エネルギ効果と同時に、樹脂温度低下による高品質化を可能とした。
図1に従来機および超深溝機のCAE解析結果を示す。超深溝機は、スクリュ頂部付近の局部的な温度上昇がほとんど見られず、樹脂温度のバラツキが小さいことがわかる。同一運転条件における従来機との比較では、超深溝機の樹脂温度は、従来機よりも5℃低下、押出量をステップ的に変化させた場合の圧力変動幅は、50%低減した事例があり、超深溝機は従来型機よりもマイルドな混練が可能で、運転条件変更に対してもフレキシビリティが高い。

特に、熱安定性の低い樹脂におけるフィラーコンパウンディングにおいては、スクリュ構成や運転条件の適正化により、許容樹脂温度以下で従来型機に対し、1.5倍の押出量増大を達成した事例もある。
また、大きなフリ-ボリュ-ムを持つ超深溝機は当社比較試験において、従来型機に比べ滞留時間が増大することが確認されており、前記の優れた均質化混練特性と相まって、長い滞留時間と良好な攪拌性能を必要とする反応押出や脱揮押出プロセスへの適用も期待される。

2.3 スクリュ深溝化の応用展開

図2 二軸超深溝機・単軸押出機消費電気量比較

図2 二軸超深溝機・単軸押出機消費電気量比較

製品の高品質化や高度化に対応して、樹脂温度を低下できる超深溝型二軸押出機の採用は、年々増加しており、多層フィルム成形ラインの副押出機に採用したケースでは、低樹脂温度化に加え、従来設備比で30%以上の省エネを達成した事例も報告されている。(図2参照)

図3 新型二軸押出機“TEM-CS 型”

図3 新型二軸押出機“TEM-CS 型”

最近では、光学関連やエネルギ関連の機能性シートやフィルムの直接成形用途などにも多用されている。
コンパウンディング用途では、従来型機(深溝比1.55)と超深溝機(深溝比1.8)の利点を生かした複合型の二軸押出機の開発にも応用されている。

図4 TEM機の運転特性比較

図4 TEM機の運転特性比較

図3に示す新型二軸押出機(CS型)は、原料供給側に搬送容積の大きな超深溝スクリュプロファイルを、混練部にはせん断作用の高い従来型スクリュプロファイルを組み合わせ、良好な分散状態と低樹脂温度化を両立し、両者の利点の相乗効果を引き出し、分散性能を低下させることなく処理能力の大容量化を実現した。(図4参照)

3 . おわりに

二軸押出機は、その他の押出機にない優れた機械的特性を持っていることから、その用途は、今後もますます拡大していくものと思われる。今回紹介した超深溝プロファイルを持つ二軸押出機は、ある意味、新世代の二軸押出機と位置付けられる。超深溝機の応用展開は、まだ始まったばかりであり、今後もユーザの支援、助言をいただきながら、ユーザと一体になった開発を進めていきたい。

参考文献

  1. 小林昭美:“2軸押出機による複合化プロセス成形加工,第18巻,第3号(2006),P166
  2. 小林昭美:“コンパウンディング”Plastics Age Encyclopedia,進歩編(2006),P203
  3. 遠藤邦明,廣瀬高志,野木貴之:“2.1.3 成形技術の開発”地球温暖化防止新技術プログラム「製造工程省略による省エネ型プラスチック製品製造技術開発」プロジェクト,事業公開原簿(2005),P205
  4. 安倍賢次:スクリュ・ダイを中心とした押出成形機のデザインと成形加工事例,(株)情報機構(2009),P165
  5. 中沢俊貴,水上雄太,片平利彰,小林昭美:第16回成形加工学会秋期大会(2008),“新型押出機による押出性能向上”