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D-1 大型機械製品を支える
大物鋳物・高機能鋳物の製造技術

D-1 大型機械製品を支える大物鋳物・高機能鋳物の製造技術

当社では、約200kgから57000kgと、中小物から大物の鋳鉄鋳物を製造している。特に、大物鋳物を得意とし、国内最大の10mを超える長尺鋳物や製品重量が 50トンを超える大物鋳物の製造技術や、パイプを鋳ぐるみする複合鋳造法などの技術を有している。本稿では、大物鋳造技術、パイプを鋳ぐるみした高機能鋳物素材の2点について紹介する。

【プラットフォーム】D.材料技術
【適用マシン】工作機械、射出成形機、ダイカストマシンなどの大型機械、大物鋳物・高機能鋳物

<技術ポイント>

  • 大物長尺鋳物の製造:最大寸法(W ・L・H)5m・10m・2mまたは2m・15m・2m、最大製品重量 57000kg
  • 大物厚肉球状黒鉛鋳鉄の製造:最大寸法(W ・L・H)4m・4m・2m、最大製品重量  57000kg
  • パイプ鋳ぐるみ高機能鋳造法:鋳物部品の機能向上と穴加工工数の削減

1 . はじめに

大物長尺鋳物は、いかに熱変形による形状不良をなくすことができるかが重要な技術であり、大物厚肉球状黒鉛鋳鉄鋳物は無押湯で健全な球状黒鉛組織の鋳物ができるか、高機能鋳物はパイプをいかに変形しないで鋳込むことができるかがポイントになる。

2 . 長尺鋳物製造技術

2.1 反りの生じる仕組み

図1 反りの発生

図1 反りの発生

長尺鋳物は、上面と下面との肉厚差や温度降下条件の差により、図1のように応力Pが発生しその結果、円弧状「反り」を生じることがある。反りは鋳造品の長さ、高さ、断面形状等の影響によりその度合が左右される。

2.2 長尺鋳物逆反り量の考え方

一般的には長尺鋳物の反りに対して、反りの大きさを見込んで、逆の方向に反らして造型する。
該当する製品の断面形状と類似品の反り量の実績値から製品の断面形状が類似品と比べて、反る量がより多い(プラス傾向)か、より少ない(マイナス傾向)かを表1の項目を参考に判断する。実際には複雑な形状が多く、豊富な経験とデータをもとに造型作業を行っている。
表1に従って、反り量を予測し、仕上げ代量および機械加工方法を考慮し、反り量を反対側へ付ける「逆反り付け量」を決定する。

表1 長尺鋳物の逆反り量の推定
比較項目例(-) ← 反り傾向 → (+)
製品高さ高い ← → 低い
下板肉厚薄い ← → 厚い
下板/上板肉厚比小 ← → 大
下板/上板面積比小 ← → 大
上板イヌキ面積比小 ← → 大
総縦リブ肉厚大 ← → 小

2.3 製造可能長尺サイズ

図2 長尺鋳物製品(ベッド)

図2 長尺鋳物製品(ベッド)

鋳型に適正な逆反り量を付けることにより、最小の機械加工仕上げ代とすることができ、加工工数の削減が可能になる。長さ10m程度の鋳物の場合、反り量10mm以内の長尺鋳物製品を提供している。(図2)

製造可能な寸法と重量

  • 最大寸法(W・L・H) 5m・10m・2m / 2m・15m・2m
  • 最大製品重量 57000kg

3 . 大物厚肉球状黒鉛鋳鉄製造技術

図3 型締力2500トンの大型ダイカストマシン用ダイプレート

図3 型締力2500トンの大型ダイカストマシン用ダイプレート

無押湯方法で、成分・鋳型強度・鋳込温度・球状化率・実体強度を管理することにより、厚肉でも内部が健全な球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することができ、射出成形機やダイカストマシンのダイプレート等の部品を提供している(例:図3)。また、歩留り向上によりコスト低減が図れる。

製造可能な寸法と重量

  • 最大寸法(W・L・H) 4m・4m・2m
  • 最大製品重量 57000kg

大物厚肉球状黒鉛鋳鉄鋳物では、一般的にドロス※注1)欠陥が発生しやすいが、当社では、成分調整および湯道方案の改善により、ドロスの発生を抑えている。

※注1)ドロス:球状黒鉛鋳鉄特有の鋳肌表面層に発生する酸化物欠陥

4 . 高機能鋳物素材の製造技術

図4 鋳ぐるみ用鋼管ユニット

図4 鋳ぐるみ用鋼管ユニット

鋳造部品には、多様な穴加工が必要な部品があり、長穴や複雑な穴加工は、多大な機械加工工数を必要としている。当社では、鋼管ユニット(図4)を鋳物内部に鋳ぐるむことで、穴を形成した製品(図5)を提供し、鋳物部品の機能向上と穴加工工数の削減に寄与している。

図5 鋳ぐるみ鋳造物

図5 鋳ぐるみ鋳造物

製造にあたっては以下が技術ポイントになる。

  • パイプの位置ずれや変形がない
  • パイプの溶着がよく、溶損がない
  • 吹かれ(ガス欠陥)が発生しない
  • パイプ溶接部からの溶損がない

5 . おわりに

機械性能、経済性にすぐれた大物鋳物素材の提供や、複合鋳造技術による高機能鋳物(パイプ鋳ぐるみ)などの技術により、機械性能向上・加工工数の低減などが可能となった鋳物を、社内はもとより広く社外にも提供している。