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F-2 有限形V-Vころがり案内

F-2 有限形V-Vころがり案内

シンプルな構造で高い剛性が得られる有限形V-Vころがり案内を開発し、超精密非球面・自由曲面加工機をはじめとする各種高精度工作機械に適用している。ころがり軸受の欠点である微小うねりを極小化するため、案内面の仕上げ方法、ニードルの精度向上、ニードルの移動体への出入部形状などを追求し、高精度、高剛性かつコンパクトな案内技術を確立した。

【プラットフォーム】F.摺動と回転
【適用マシン】各種超精密工作機械

<技術ポイント>

  • 高精度、高剛性かつコンパクトな超精密機器要素
  • V-V案内面と移動体間にニードルを挿入し、摩擦係数を低減
    ・・・約200万時間の寿命
  • リニアモータと組み合わせで、超精密工作機械へ適用
    ・・・指令分解能1nm、最高送り速度15m/min

1 . はじめに

切削や研削などの加工法は、工具を介して工作機械の動作軌跡が加工物に転写される原理に基づいている。このため、レンズ金型など、高い加工精度を必要とする工作機械には、機械動作の高精度化を図るさまざまな工夫がなされている。当社では、超精密加工機械の基本性能を支える案内要素技術として、高速・高精度・高剛性といった要求を満足する有限形V-Vころがり案内を開発し、各種製品へ適用している1)。本稿では、本案内技術の開発経緯と特長、適用事例について述べる。

2 . 開発経緯

図1 V-Vすべり案内

図1 V-Vすべり案内

ナノメートルオーダの位置決め精度と高い追従性を得るためには、案内の摩擦係数をできるだけ小さくする必要がある。一般に市販され、汎用的な工作機械に広く利用されているボール循環形あるいはクロスローラ形ころがり案内は、摩擦係数が低いことに加え、剛性も高いため、一部の超精密加工機には利用されている。しかし、転動体の案内面への導入・排出時に微小うねりが発生するため、超精密な形状を創生する工作機械の直動案内としては使用できない。このため、超精密加工用の直動案内には、V-Vすべり案内や流体軸受である空気静圧案内、油静圧案内が多く用いられている。
図1は、V-Vすべり案内を示したもので、その構造は
シンプルであり、入念なすり合わせを行うことにより、微小うねりのない滑らかな運動と真直度0 . 3 μm/400mm以下の実績が得られている。この性能は、超精密加工用の案内として十分使用することができ、位置決めの必要がない超精密スライサーやポリゴンミラー加工機の送り案内として適用されている。しかし、すべり案内であることから摩擦係数は0.2~0.3と大きく、0.1mm/minの送り速度の領域では、スティックスリップが発生するため、ナノメートルオーダの超精密な位置決めや複数軸の同期が求められる案内への適用は困難である。
油・空気静圧案内は、運動精度、位置決め精度、追従性、微小うねりに関して、理想的な案内形式といわれている。その反面、偏荷重に対して油膜や空気膜厚さが変化しやすいこと、油静圧案内は、供給油圧の振動抑制が難しいこと、さらには、熱的な安定性を得るための供給油の精密な温度制御が±0.01℃と極めて厳しいことが、その適用範囲を極めて限られたものにしている。
前述のように、V-Vすべり案内は、剛性、精度、コンパクトさの点から超精密加工機械にも十分使用できる案内形式であるが、動圧軸受であることから、微細な位置決め、極低速送りには対応できない。そこで、V-Vすべり案内の特長を生かし、摩擦係数を流体軸受並に低減する方法として、V-V形状の案内面と移動体の間に真円度、円筒度、直径が高精度に管理されたニードルを挿入した有限形V-Vころがり案内を開発した。

3 . 有限形V-Vころがり案内の特長

図2 有限形V-Vころがり案内の真直度

図2 有限形V-Vころがり案内の真直度

有限形V-Vころがり案内(冒頭図矢印部参照)は、V-Vすべり案内の製作方法と同様に、 V-Vマスタを基準とした、きさげによるすり合わせ作業により、固定側(ベッド)、移動体(テーブル)双方とも仕上げられる。
きさげされた面には2μm~3μmの凹凸がある。すべり案内の場合には、この凹凸が油だまりとなり、くさび効果で動圧が発生し、滑らかなテーブル運動が得られる。有限形V-Vころがり案内の場合、きさげ面の凹凸がニードルの転動運動精度に影響することを避けるため、きさげで精度を確保した後に、遊離砥粒によるラッピングにより、きさげ面の凹凸を除去している。
また、ニードルの精度向上、ニードルの移動体への導入・排出部の形状などの追求により、微小うねりを極小化した。一方、軸受寿命を算出し、通常の使用条件で約200万時間と十分な寿命が得られることを確認している。

図3 1nmステップ送り追従性

図3 1nmステップ送り追従性

図2は、本案内の真直度を測定した結果であり、油・空気静圧案内に匹敵する微小うねり・真直特性が得られていることがわかる。また、図3は、有限形V-Vころがり案内に、コア付リニアモータを駆動源として組み合わせた、超精密非球面・自由曲面加工機のステップ送り精度を測定した結果を示したものであり、1nmステップの指令追従が可能であることが確認されている。

4 . 各種超精密工作機械への適用

図4 超精密非球面・自由曲面加工機(ULG-100D)

図4 超精密非球面・自由曲面加工機(ULG-100D)

有限形V-Vころがり案内は、コア付リニアモータとの組み合わせで、指令分解能1nm、最高送り速度15m/minが実現され、各種の超精密工作機械へ適用されている。図4は、非球面レンズや回折格子等の金型加工に適用される超精密非球面・自由曲面加工機を、図5は、プリズムシートなどの液晶ディスプレイ用光学フィルムを成形するロール金型加工に適用される超精密溝入旋盤をそれぞれ示したものであり、本技術は、光学分野を中心に広く活用されている。また、高精度かつコンパクトな案内として、精密測定機の位置決めステージとしても活用されている。

図5 超精密溝入旋盤(ULR-628B(H))

図5 超精密溝入旋盤(ULR-628B(H))

5 . おわりに

超精密加工機械の基本性能を支える要素技術として、高剛性、高精度を実現した有限形V-Vころがり案内について紹介した。引き続き性能を追及していくとともに、高精度かつ高剛性、コンパクトな超精密機器要素として、工作機械に限らず、適用分野の拡大を図っていく。

参考文献
1)田中克敏:情報化社会に貢献する超精密加工、 砥粒加工学会誌,50,10(2006)563