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G-1 高品位金型加工技術

G-1 高品位金型加工技術

金型加工技術は、工作機械とNC制御装置の進化に伴い、倣い加工からCAMデータによる自動運転加工に変化してきた。特に、自動車用金型には高生産性が求められ、金型が一体化・大型化し、複雑形状になっている。その結果、大容量化したCAMデータによる金型加工が一般化され、型造りはコスト重視となり、高効率生産が求められている。本稿では、金型の高品位・高効率生産を行う最新の制御技術を活用した高効率加工技術を紹介する。

【プラットフォーム】G.金型起点の成形加工技術
【適用マシン】工作機械

<技術ポイント>
CNCSHAPE機能:
加工データの内部演算を行うことにより、高品位な加工面を効率よく生成する機能

  1. SF機能:加工面の勾配変化に対し、工具周速制御を行う機能
  2. 領域加工機能:加工条件の異なる部位が混在するときの領域指定加工
  3. 早送り円弧補間移動機能:戻り時間28%短縮
  4. インコーナ加工:ポケット穴を三角形状の工具で切削加工する機能

1 . はじめに

金型加工は、パソコンとCAMソフトの進化により加工データ(プログラム)の大容量化が進んでいる。それに伴い工作機械のNC制御装置も進化している。
その一例が、大容量化されたデータを加工しながら先読みし、高品位加工面を生成するよう、加工データの内部演算を行う機能(CNCSHAPE機能)である。このCNCSHAPE機能を活用した技術として以下の機能を紹介する。

  1. 工具周速制御を活用した「SF機能」
  2. 指定領域内で加工条件の異なる部位に対し、領域別に加工条件を設定する「領域加工機能」
  3. 早送り円弧補間移動機能「G00円弧機能」
  4. ポケット穴のコーナを切削加工する「インコーナ加工」

2 . CNCSHAPE機能

2.1 SF機能

図1 形状変化による刃先周速度の変化

図1 形状変化による刃先周速度の変化

金型の加工に使用されるボールエンドミルは、先端形状がボール状となっており、加工に関わる刃の位置によって、周速が変化する。即ちボールの回転軸心に近いほど、直径が小さくなるため、周速が遅くなる。
ボールエンドミルを使用して金型の自由曲面を加工すると、機械の主軸回転速度が一定であるため、実際に加工している刃の周速が常に変化することになる。図1のように急勾配部分の加工では、直径が大きく、周速が速くなるが、なだらかな部分では、直径が小さくなり、周速が遅くなる。
SF機能とは、このような加工面の勾配変化をXまたはY移動量に対するZ方向の移動量から、ブロックごとに傾斜角を演算し、ボールエンドミルの接触直径(切削点直径)の算出結果から、指定された切削速度を維持するよう回転速度と送り速度の指令を行う機能である。

図2 SF機能評価モデル

図2 SF機能評価モデル

図2のSF機能評価モデルを従来の加工法と、SF機能による条件設定にて加工したときの加工時間の比較を表1に示す。
<加工条件>
被削材質:鋳鉄(FC300)
使用工具:R15ボールエンドミル(工具1回転当りの送り量を一定)

図2に示すようにSF機能を適用した場合、加工面の傾斜に応じて主軸回転速度と送り速度が変化していることがわかる。結果として、加工時間が29%短縮し、加工面の品質は、平坦部で向上している。工具についても、工具摩耗が減少し長寿命化の効果が得られる。

表1 加工時間の比較
加工法従来SF加工
主軸回転速度S(min-12500最大5000
送り速度F(mm/min)2500外径比例する
加工時間62分40秒44分30秒

2.2 領域加工機能

図3 逃がし加工領域の設定とインサート材SKD-11が混在している金型

図3 逃がし加工領域の設定とインサート材SKD-11が混在している金型

金型表面には、スライドブロック用のポケット穴や埋設された異種材が存在することがある。この部分を同一条件で加工すると工具の破損や加工効率の低下などを引き起こし、金型加工の課題となっている。通常、このような加工条件が異なる部分については、加工プログラムを分けて、加工を行っている。そのため、加工段差などによる加工品質の低下や、加工時間の増加の原因となっている。
領域加工機能とは、前述したように加工条件が異なる部分が存在する場合、あらかじめその領域を設定し、設定した部分に工具が進入すると、事前に設定した加工条件に変える機能である。本機能は、プログラムした条件に対し、送り速度と主軸回転速度にオーバライドを働かせることができる。さらに、設定領域内で工具をZ軸方向に逃がすようシフト量を設定することも可能であり、磨き不要面の逃がし加工に対応でき
る。(図3上部)
図3は、異種材(SKD-11)が混在する加工事例である。金型に埋設された異種材部分の加工条件を変化させ加工面品位向上を図り、磨き工程の削減を実現した。
領域機能は、次のような加工に有効である。

  1. ポケット加工など、加工負荷が増大する部分
  2. 長い工具で、ビビリ振動が発生しやすい部分
  3. 異種材が埋設されている部分
  4. 高硬度材などの縦壁部分

2.3 早送り円弧補間機能

図4 早送り円弧補間機能

図4 早送り円弧補間機能

金型などの形状加工の加工経路は、「一方向加工」「往復加工」が一般的である。
一方向加工は、加工方向が同じであるため、高品質な加工面を得ることができるが、加工開始位置へ戻る動作があり、加工時間が長くなる。
往復加工は、加工時間が短く加工効率は向上するが、アップ加工とダウン加工の繰り返しになり、隣接工具パス間に加工段差が生じやすく、加工面品位が悪くなる。従って、高品位の加工面を得るために、一方向加工を採用し、戻り動作の高速化を行う手段として「早送り円弧補間機能」を活用する。
本機能は、従来の一方向加工時の戻り経路が早送り指令であっても、機械制御側で円弧指令を自動生成する機能である。本機能の動作例を図4に示す。
早送り円弧補間機能を使用すると、自動的に戻り経路のコーナ部分(角部)が円弧動作になるため、加減速の無駄時間が少なく、加工時間の短縮につながる。前述の図2の形状加工において、本機能を使用すると、従来型に対し、戻り時間を28%短縮することができた。

2.4 インコーナ加工

図5 ポケット穴加工

図5 ポケット穴加工

図5に示すようにエンドミルを用いてポケット穴加工を行うとコーナ部分は工具のR形状で加工される。従来、このコーナ部に角を設ける場合は、放電加工に頼らざるを得なかった。
放電加工の場合、加工形状に合わせた電極の製作と放電加工の時間が必要である。
インコーナ加工機能は、このコーナ部の加工を特殊な三角形状の工具を用い、切削加工にてコーナ(角)部を削り出す機能である。その加工サイクルを図6に示す。

図6 インコーナ加工サイクル

図6 インコーナ加工サイクル

図6のように工具回転と各送り軸の同期制御を行い、コーナ部の角を削り出す機能である。切削加工は、放電加工より加工時間が短く、効率良くポケット角穴を加工することができる。しかし、工具の切削速度が低いため、工具の寿命が短くなる問題が残されている。

3 . おわりに

今回紹介した金型加工機能を組み合わせることにより、高品位で高効率の金型加工を行うことが可能であるが、金型には、スライドピン用の傾斜穴や冷却用の配管穴が多数あり、これらの高効率加工も加工時間短縮には必要不可欠である。このように金型製作の改善課題は多く、今後も金型加工の高効率・工程集約を行うための加工技術の開発に注力し、加工技術の高度化を進めていきたい。

参考文献
1) 加藤 孝一、杉山 晴仁 : 機械と工具(2010-3)、制御技術(CNCSHAPE)を活用した省エネ・高効率金型加工の提案