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G-2 超高速・高圧成形による超薄肉・軽量化成形技術

G-2 超高速・高圧成形による超薄肉・軽量化成形技術

近年、プラスチック成形加工の分野では、射出成形部品の薄肉・軽量化の要求が高まっている。特に、携帯電話をはじめとするFPD(フラットパネルディスプレイ)部品では、バックライトを構成する導光板の薄肉・軽量化が進み、現在では厚さ0.35~0.40mmが主流となっている。本稿では、更なる超薄肉成形品に対応する超高速・高圧射出仕様機「EC100SX-2ZZ」による超薄肉・軽量化成形技術について紹介する。

【プラットフォーム】G.金型起点の成形加工技術
【適用マシン】射出成形機

<技術ポイント>

  • 超高速・高圧射出仕様機「EC100SX-2ZZ」
    射出速度1300mm/s
    加速度8.3G
    最大射出圧力350MPa
  • 光学プレートにおいて、微細加工深さで97.0%の高転写率

1 . はじめに

液晶テレビ・携帯電話・デジカメ・カーナビなど液晶ディスプレイが組み込まれたIT関連製品は、高機能化を続けており、市場は、大型化・高輝度化・薄肉化・軽量化に向かっている。代表的な例として携帯電話のバックライトユニットに使用されている導光板においては、導光板の長さ寸法を厚み寸法で割った値(L/T)が200を超える超薄肉成形品が主流になりつつある。また、導光板は、光の反射機能や拡散機能を持たせるため、表面に微細形状が加工されたものが一般的であり、それを忠実に再現させる微細転写も同時に達成しなければならない。射出成形機による超薄肉成形では、充填工程で金型表面にスキン層が拡大する前に流動層を伸ばし、充填完了位置まで到達させる必要がある。これを達成するためには高射出圧力、高射出率、高加速度を備えた射出成形機による超高速・高圧成形が必要となる。

2 . 超高速・高圧成形の特徴

図1 超高速・高圧射出成形機 EC100SX-2ZZ

図1 超高速・高圧射出成形機 EC100SX-2ZZ

超高速・高圧成形への市場要求に応えるべく、当社では「高生産性」「精密・安定成形」をコンセプトとして開発した「EC-SXシリーズ」をベースに、超高速・高圧射出仕様を付加した「EC100SX-2ZZ」を開発した。その外観を図1に主な仕様数値を表1に示す。

表1 仕様数値一覧表
  項目 単位 EC100SX-2ZZ EC100SX-2A(標準)
射出関係 スクリュ径 mm 22 32
理論射出体積 cm3 38 102
最大射出圧力 MPa 350 220
最大保圧 MPa 280 220
射出速度 mm/s 1300 200
射出率 cm3/s 494 161
可塑化能力(PS) kg/h 22 61
スクリュ回転速度 min-1 420 390
型締関係 型締力 kN 980
ダイバ間隔 mm 460×410
ダイプレート寸法 mm 660×610
型締ストローク mm 350
最大デーライト mm 900
図2 従来制御での最小クッション変動

図2 従来制御での最小クッション変動

超薄肉成形では、金型内に充填した樹脂は0.1s以下の極めて短時間に固化する。そのため、固化前に超高速射出速度で安定した樹脂量を充填することが成形上のポイントとなる。「EC-SXシリーズ」では、スクリュを駆動させる射出ラムの摺動部に、リニアガイドを組み込んだ「フリクションフリードライブ」を標準採用しており、移動時の摺動抵抗を極限まで抑える、抵抗の少ない射出の立ち上がりと、射出中の圧力制御や計量時の背圧制御の精度向上を果たしている。さらに、超高速・高圧射出仕様では、高出力・低イナーシャモータを射出軸用ボールネジに直結するダイレクトドライブ駆動方式により、射出速度1300mm/sまで8.3Gの加速度で到達することが可能で、最大射出圧力350MPaを実現している。

このような超高速・高圧射出仕様においても、「EC-SXシリーズ」のコンセプトである「精密・安定成形」を実現するためには、可塑化の安定計量や高剛性型締装置に加え、モータ制御の高速周期化が必要不可欠となる。図2に、射出速度1300mm/sにおける当社の従来制御での最小クッション変動と成形品外観を示すが、このケースでは保圧切換位置が制御的にずれることにより、良品と、製品先端部が未充填であるショートショットの状態が交互に現れる結果となった。

図3 高速制御での最小クッションと最大射出圧変動

図3 高速制御での最小クッションと最大射出圧変動

しかし「EC100SX-2ZZ」では、「EC-SXシリーズ」の標準装備である新コントローラ「INJECTVISOR-V50」の高速制御により、射出速度1300mm/sにおいても最小クッション変動幅を0.05mmに抑え(図3)、ショートショットのない安定した連続成形が実現できた。

3 . 超薄肉成形事例

図4 超薄肉光学プレート(左側:V溝加工、右側:ドット加工)

図4 超薄肉光学プレート
(左側:V溝加工、右側:ドット加工)

超高速・高圧成形における超薄肉成形の一例として、最小肉厚0.3mmの光学プレート成形事例を紹介する。
この光学プレートの外形寸法は、幅41mm、長さ75mmであり、3.5インチワイドの画面サイズに相当する。L/Tは250に達し、超薄肉成形に分類される。金型は2枚取りで、各キャビティにはそれぞれ異なる微細加工パターンが施されている。このような超薄肉成形を実現するためには、超高速・高圧射出仕様を有した射出成形機だけではなく、成形材料や金型を含めたトータルエンジニアリングシステムでの構築が必要となる。
今回の光学プレート成形では、成形材料は高流動グレードPC(ユーピロン® HL7001、三菱エンジニアリングプラスチックス(株))を使用した。金型構造は、高速充填に適した設計と高圧に耐えバリを防ぐ強度が必要となる。また、充填をスムーズに行うため、ガスベントが必要であるが、ガスベントを多く設けるとバリが出やすくなるという相反する結果となる。
しかし、「EC-SXシリーズ」では「ダブル剛体プレート」と呼ぶ高剛性型締装置により、バリの発生を抑えることが可能である。
このシステムにおいて、射出速度1100mm/s、充填時間0.036sで成形した光学プレートのサンプルを図4に示す。また、金型の微細パターン深さとサンプルの成形品高さをそれぞれ測定したところ、微細パターン深さ2.770μmに対して成形品高さ2.688μmであり、97.0%の高転写率が実現されている結果となった。

4 . おわりに

プラスチック製品の超薄肉・軽量化は、プラスチック成形加工に求められる重要な市場要求の一つであり、さらなる発展が期待されている。今後も当社は、プラスチック成形加工に対するさまざまな市場要求を的確に捉え、その期待に応えるべく、機械と制御の両面より進化発展させる所存である。