固定サイクル

固定サイクルについて

以下の説明はG90(アブソリュート)でプログラムした場合を想定しています。

基本動作

固定サイクルの動きに関して、I点、R点、Z点があります。
I点:(イニシャル点)固定サイクルが指令された時のZ軸位置
R点:(クリアランス点/リファレンス点)Z軸が早送りから
切削送りに代わる位置(固定サイクル指令中のRの値)
Z点:最終加工深さのZ軸位置(固定サイクル指令中のZの値)

基本動作

注意事項

◇G91インクレメンタル指令でプログラミングする場合

  • RはI点からの相対寸法、ZはR点からの相対寸法を入力する。
  • 位置は今いる座標からの相対寸法を入力する。

※深さ関係は変更時にヒューマンエラーを起こしやすい為
G90で指令する事を推奨。

◇アラーム発生の解決事例

  • 固定サイクルを指令し、別の固定サイクルを使用したい場合は各Gコード
    でアドレスの意味が異なるものもある為一度G80のキャンセルコードを
    指令してから実行する。
  • G99(R点復帰)指令時に、前のブロックのZ位置が現在のI点になる為、
    R点位置がI点より高い位置に指令された場合はアラームとなる。
    「I点>R点>Z点」の位置関係をになっているか確認する。
  • G80のキャンセルコードが指令されているか確認する。

固定サイクル一覧

タイプ Gコード 名称
ドリル
加工
G77 ステップ&ピックサイクル

G78

可変ピックサイクル
G79 バックボーリングサイクル
G81 ドリルサイクル(スポットドリル)
G82 ドリルサイクル(カウンターボーリング)
G83 ピックサイクル
G87 ステップサイクル
タップ加工 G84 タップサイクル
ボーリング
加工
G85 ボーリングサイクル(リーマ)
G86 ボーリングサイクル
G88 ファインボーリングサイクル
G89 ボーリングサイクル
G186 多段ボーリングサイクル
G80 固定サイクルキャンセル
関連指令 G98 イニシャル点(I点)復帰
G99 クリアランス点(R点)復帰
G100 穴あけ無視(ワンブロック)

指令内容

G77 ステップ&ピックサイクル

◇機能◇
指令した深さまでは、ステップサイクル(G87の動き)の動きを行い、そこから穴底までは
ピックサイクル(G83の動き)の動きを行う。
Z点まで加工後、早送りで復帰位置まで戻る。

G77(X_Y_)Z_R_Q_K_F_(L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
Q:一回当たりの切込み量(常にインクレメンタル指令)
K:ステップサイクルの動きから、ピックサイクルの動きに変わる点のZ座標値
  (G91モード時はR点からの距離)
F:送り速度
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

図中の1mmと表記されている戻り量はセッティングパラメータにて
変更する事ができる。
※初期設定が1mmとなっている(詳しくは取扱説明書を参照)
最終回深さはZ指令で調整される為R点からZ点まではQの倍数である必要はない。

G77

G78 可変ピックサイクル

◇機能◇
ピックサイクルと同じように指令するが、一回当たりの切込み量が変化する。
切込み量は順次少なくなっていく。
Z点まで加工後、早送りで復帰位置まで戻る。

G78(X_Y_)Z_R_Q_K_F_(L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
Q:一回当たりの切込み量(常にインクレメンタル指令)
K:可変量(常にインクレメンタル指令)
F:送り速度
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

Q・Kは必ず指令し、Q>0、K>0、Q>Kとなるよう指令する。
Q-KがKより小さくなる段階で残りはKづつ加工する。

1mm表記のクリアランス量はセッティングパラメータにて変更可能。
(詳しくは取扱説明書を参照)

G78

G81 ドリルサイクル(スポットドリル)

◇機能◇
タップの下穴の加工や、ボーリングでの粗加工などに使用する。
Z点まで加工後、早送りで復帰位置まで戻る。

G81(X_Y_ )Z_R_F_(P_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
F:送り速度
P:間欠給油時間の秒数を指令(オプション)
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇
R点からZ点まで一回で加工する為、深穴加工や硬い加工物の時はキリコ詰まりや
クーラントがかからず工具の摩耗や負荷がかかる為、破損の原因にもなる。
そのため別のG83やG87を推奨する。

G81

G82 ドリルサイクル(カウンターボーリング)

◇機能◇
Z指令位置まで加工し穴底でドウェルを行うドリルサイクル。
ドウェルを行うので、盲穴加工で穴の深さの精度が上がる。
ドウェルが終了したら早送りで復帰位置まで戻る。

G82(X_Y_)Z_R_F_(P_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
F:送り速度
P:ドウェル時間
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇計算◇
P=i×60min/S  (i=N回転)

例)2回転で穴底を加工したい場合
P=2×60(min)/180(rpm)≒0.66(min)
なので、P0.66 と入力する。

G82

G83 ピックサイクル

◇機能◇
ドリル加工で深穴の場合の固定サイクル。
Qで指令された何mm切削毎に都度R点まで戻り、
キリコを外に出しながら加工していく。
Z点まで加工後、早送りで復帰位置まで戻る。

G83(X_Y_)Z_R_Q_F_(J_P_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
Q:一回当たりの切込み量(常にインクレメンタル指令)
F:送り速度
J:刃先の引き抜き量(常にインクレメンタル指令)
P:ドウェル時間(J指令がされた時のみ有効)
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

  • J指令の有無で加工する動きが異なる。
  • 図中の1mmと表記されているクリアランス量はセッティングパラメータにて
    変更する事ができる。
    ※初期設定が1mmとなっている(詳しくは取扱説明書を参照)
  • R点からZ点までの距離はQの倍数である必要はない。
    (最終回の深さはZ指令にて調整される)
G83

◇Jを指令した場合◇

毎回切込み毎にR点に復帰していた指令無しの動きに対し、
Jを指令すると、
①引抜き量分までQmm切削後、早送りでd1mm戻りQmm切削する、
を繰り返す。(ここまでR点には戻らない)
②Jの深さ分切削すると早送りでR点まで戻る。
③次に穴底(J点)からd2mm手前まで早送りで進み、①②を繰り返す。
※深穴加工の場合、Jを指令した方が時間が短くなる。

d1mmは戻し量、d2mmはクリアランス量でセッティングパラメータにて設定
可能。初期設定はどちらも1mmとなっている。(詳しくは取扱説明書を参照)

G83

◇Jを指令した場合◇

毎回切込み毎にR点に復帰していた指令無しの動きに対し、
Jを指令すると、
①引抜き量分までQmm切削後、早送りでd1mm戻りQmm切削する、
を繰り返す。(ここまでR点には戻らない)
②Jの深さ分切削すると早送りでR点まで戻る。
③次に穴底(J点)からd2mm手前まで早送りで進み、①②を繰り返す。
※深穴加工の場合、Jを指令した方が時間が短くなる。

d1mmは戻し量、d2mmはクリアランス量でセッティングパラメータにて設定
可能。初期設定はどちらも1mmとなっている。(詳しくは取扱説明書を参照)

G83

G87 ステップサイクル

◇機能◇
ドリル加工で深穴の場合の固定サイクル。
Qで指令された数mm分切削毎に少し戻り、キリコを切りながら加工する。
最終深さまでR点に復帰しない為、ガンドリル等を使用する時に指令する。
Z点まで加工後、早送りで復帰位置まで戻る。

G87(X_Y_)Z_R_Q_F_(L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
Q:一回当たりの切込み量(常にインクレメンタル指令)
F:送り速度
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

図中の1mmと表記されている戻り量はセッティングパラメータにて
変更する事ができる。
※初期設定が1mmとなっている(詳しくは取扱説明書を参照)
最終回深さはZ指令で調整される為R点からZ点まではQの倍数である必要はない。

G87

G84 タップサイクル

◇機能◇
タップ加工の固定サイクル。
Z点まで加工後、切削送りのまま逆転でR点まで移動し
早送りで復帰位置まで戻る。

指令は2種類の方法で指令できる。

ノーマルタップ
G84(X_Y_)Z_R_F_(P_E_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
F:回転数×ピッチ
P:間欠給油時間(オプション)
E:ドウェル時間(ねじ深さ制限装置内蔵タッパー使用時のみ)
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

  • F指令の内容が今までの固定サイクルと異なるので注意する。
  • タッパーを使用しているため、G99(R点復帰)の使用は避ける。
    刃先がまだ加工物に食い込んでいる状態で次の位置決め点へ移動した場合
    加工物と工具の破損に繋がり大変危険。
  • R点と加工物の端面は10mm~15mmほど離す。



同期タップ
G84(X_Y_)Z_R_F_(L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
F:ピッチ
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

  • F指令の内容がピッチの値になる。
  • ノーマルの場合回転指令はM03・M05で指令していたが
    同期タップの場合はM03→M843 M05→M845を使用する。
  • M843・M845は同じブロックに別のワードと一緒に指令できない。
  • R点と加工物の端面は10mm~15mmほど離す。


◇プログラム例◇
  :
G00X100Y50S425 ←「回転数は先に指令」
G43Z100H01
M843 ←「単独指令」
G84Z-15R10F1 ←「Fはピッチ」
G80
M845 ←「単独指令」
  :
M02

G84

G85 ボーリングサイクル(リーマ)

◇機能◇
ボーリングやリーマ加工を行う固定サイクル。
Z点まで加工後、切削送りでR点まで戻り
早送りで復帰位置まで戻る。

G85(X_Y_)Z_R_F_(P_E_L_C_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
P:間欠給油時間(オプション)
E:ドウェル時間
F:送り速度(R点→Z点までの送り速度)
C:戻り速度(Z点→R点までの戻り速度)
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇

Z点→R点の移動も回転し送り速度で移動しているため
刃先が当たる所に螺旋状の跡が残る場合がある。

G85

G86 ボーリングサイクル

◇機能◇
ボーリング加工を行う固定サイクル。
Z点まで加工後、主軸回転を停止させて早送りでR点まで戻り、
主軸回転を再開する。その後復帰位置まで早送りで戻る。


G86(X_Y_)Z_R_F_(P_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
P:ドウェル時間
F:送り速度
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)

◇注意◇
刃先が当たる所に一直線の跡が残る場合がある(回転停止しているため)

G86

G88

◇機能◇
ボーリング加工の仕上げ用の固定サイクル。
Z点まで加工後、OS(オリエンテーションストップ)で主軸回転を
停止させ、Qで指令されたシフト量分Z軸を逃がす。
I・Jで指令されたシフト量分X軸・Y軸を逃がす。
(歯の反対方向に軸をシフト)早送りでR点まで戻り、ずれた軸を
戻し主軸回転を再開する。その後復帰位置まで早送りで移動する。


G88(X_Y_)Z_I_J_Q_R_F_(P_L_)

X・Y:加工点のXY座標値(既にその位置にいる場合は省略可)
Z:最終加工深さのZ座標値
I:X方向のシフト量
J:Y方向のシフト量
K:Z方向のシフト量
R:R点(クリアランス点)のZ座標値(早送りから切削送りに切り替わる点)
P:ドウェル時間
F:送り速度
L:繰り返し回数(G91モードの時のみ)


◇注意◇
・加工に入る前に必ずOS(オリエンテーションストップ)がかかっている状態で
刃の向きとシフト方向とシフト量の指令が正しいかの確認を行ってください。
・アドレスIおよびJのデータが指令されない場合、セッティングパラメータ内で
設定されている数値が使用されるため、刃先の向きが異なるとシフト方向と
シフト量も変わるためプログラム上で指令した方が無難。

G88

G100穴あけ無視

固定サイクル中に指令されると、位置決めのみを行い穴あけを中止することができる。

◇注意◇

・G100は固定サイクル中のみ有効で固定サイクル以外で指令された場合は無視される。
・G100はワンショットのGコードなため、指令されたブロックのみ有効。

PAGE TOP